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第1回 2月16日 (木) |
「2時間で分かるタオの世界 -『黄金の華の秘密』解読の基礎知識-」
フロイトとの辛い決別のあと、ユングが後半生のなかで、自らの独自な思想を形成していくにあたり、フロイト以上に多大なる影響を受けた人物。それが、中国から帰郷したプロテスタント宣教師、リヒャルト・ヴィルヘルムでした。 ユングは、ヴィルヘルムがドイツ語に翻訳した中国の道家の秘法書『黄金の華の秘密(太乙金華宗旨)』を読んで大きな衝撃を受け、それまで秘匿してきた自らの内的体験を、ようやく外の世界へ公表する手がかりを得た、と言われています。このことが自身の大きな思想転換のきっかけとなり、ますます東洋研究や中世錬金術研究へと、ユングの興味を駆り立てていくことになります。そして最終的には、「ユング心理学」という一学派は、心だけでなく宇宙全体について考察する「ユング思想」へと変容を遂げるのです。 このように、『黄金の華の秘密』はユング思想を把握するための重要文献の一つであるにも関わらず、中国思想特有の哲学用語やタオの秘教概念が随所に散りばめられているために、難解な資料とみなされ、研究者たちからはとかく敬遠されがちでした。 本講座では、『黄金の華の秘密』の思想の底流となっているタオの基本概念の理解を深めることによって、瞑想技法のマニュアルであるこの内丹書の本質を把握することを目的とします。 さらに、こうした秘教概念の真意と、それらに対するユング自身の解釈との相違点や正誤部分を明らかにすれば、逆にユング独自の思想や特徴的な考え方を浮き彫りにすることができます。そういう意味で、『黄金の華の秘密』の本文内容に切り込みをかける本講座は、16年度のユングスタディで行ったユングによる本書注解の研究の成果を補完する役割をも担っています。
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鎌崎 拓洋 |
第2回 3月16日 (木) |
「坐と座の文明 -歴史に学ぶ生活の知恵-」
人はなぜ椅子という道具を生み出したのか。 床坐と椅子座の生活様式は何によって分かれてきたのか。 武蔵大学の日本の身体文化講座では過去4年間にわたって、世界各国のすわり方にかんする調査をおこなってきました。 すわり方の作法はどの社会においても、人間が生後にはじめて学ぶ教育課題であり、それが椅子座であれ、床坐であれ、楽にすわるための秘訣は、暮らしの形と人との関係を円滑にまわすための土台となってきました。 世界各地のすわり方の事例を古代にまで遡り、いま、わたしたちの生活はグローバル化する都市のなかで、どのような方向へむかうべきなのか考えたいと思います。
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矢田部 英正(HIDEMASA YATABE) |
第3回 4月20日 (木) |
「ユング心理学から学んだ体と心」
循環器内科医として医療現場に携わっていると、心と身体とが同じ現象(心身一如)であることを日々経験する。脳(頭)は因果論のアルゴリズムで動いているが、心と身体との関係は共時性として機能していると納得しやすいことが多い。心身を因果論として捉える思考法や解決法が現代西洋医学だが、原因検索で終わるのではなく、共時性として捉え現象の意味の目的を考えることが重要である。それはC.G.ユングや河合隼雄氏の著作から学びとった重要なことである。また、人間の脳は眠りと覚醒を生命システムとして内在している。意識レベルにリズムがあり変動することと、瞑想や呼吸法など心身変容技術が心身としての全体性のバランスを保つことは、脳と心身との関連性を示唆する。心身を共時性と捉えて体や心の目的を考えること、意識レベルにより心身のモードが変わりうることは、心理療法や心理学と現代医療の接点になりうる。いのちの原理である脳と心身との全体性を保つ生命システムを述べながら、未来の医療について感じていることを述べる。
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稲葉 俊郎 |
第4回 5月18日 (木) |
「感じる身体~月経と第一次呼吸」
月経はほとんどの女性が経験する、女性を象徴する現象である。月の満ち欠けと明らかに一致して、月に一度女性に訪れるこの血を、有史以前より人は魔力を持った「特別な血として畏怖してきた。 こんにち、月経についての基本知識は小・中学校の保健授業で習うものだが、実際のところ、その理解は男女間で相当の幅があると思われる。 イライラや不快感、時には強い痛みを伴うこの生理現象をどのように捉えるかは、女性自身の女性性の受け入れ、ひいては自己肯定感と深く関わっているのだが、性につながる話はとかくタブー視されがちである。
今回は現代医学における月経・妊娠のシステムをはじめ、古代からのあれやこれや、男性と女性の身体性を分かち地母神へと至る、豊かな血の話をしたい。
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かさいじゅんこ |
第5回 6月15日 (木) |
「タオに触れる:トリックスターと聖なる沈黙」
心理について学んでいると時々、その器となる肉体、身体についてはどう捉えているのか気になることがあります。いや、正直なところ30年くらい前は、心理関係は心だけを扱って、身体面にはあまり注目されていないのではないかと思っていたくらいでした。逆もそうですね。身体関係は心にはアプローチしない等々・・・・昔話ですが。
さて、今回のユングサロンでは、身体関係の中でもこのような会では珍しい、武道・武術の世界を通して(奇しくも「太乙金華宗旨」とも関係している派)、皆さんも一緒に「身体が啓く世界の入口」を体感していただけるような内容にしたいと思います。
・道(TAO)とトリックスター ・姿勢三態について ・触れる(自身、他者、身体の時空) ・歩く(古来の歩き方、etc.) ・古来の叡智の担い手が伝える「聖なる沈黙」
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かさいこうすけ (寿原煌介) |
氏名 | プロフィール |
鎌崎 拓洋 かまさき たくひろ |
東洋自然哲学研究家 早稲田大学 教育学部教育学科 教育心理学専修卒業。卒業論文のテーマ『人間の不安感に与える瞑想の効果』の研究。 卒業後、広告代理店に入社。JT、NEC、NTT等の広告マーケティングに携わる。主にJTの「マイルドセブン」シリーズの商品開発リサーチ、広告宣伝を担当。傍ら、東洋の身体技法と術数文化の研鑽を深める。 現在、渋谷・アルカノンセミナーズの主任講師として、『易経』および陰陽五行哲学を講じている。 <翻訳書> 『タオ人間医学』(エンタプライズ)人体科学会推薦図書 『気内臓療法』(エンタプライズ) 『タオ性科学』(エンタプライズ) 『タオ性科学・女性編』(エンタプライズ) <論文所収> 『リラクセ-ション・ビジネス』(中央経済社)
『気の妙術』(加来耕三著 出版芸術社)
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矢田部 英正 HIDEMASA YATABE |
著述家、造形作家 http://www.corpus.jp 武蔵野美術大学/武蔵大学/法政大学 放送大学非常勤講師 筑波大学大学院体育研究科修了 学生時代は体操競技を専門とし全日本選手権等に出場。 選手時代の姿勢訓練が嵩じて東洋の伝統的な身体技法を研究する。 国際日本文化研究センター研究員を経て博士号(被服環境学)取得。 学位論文は『たたずまいの美学~日本人の身体技法』として中公叢書より刊行。 姿勢研究の一環として、1999年より椅子の開発に着手し、 デザイン、制作までを手がける。 現在は、椅子を中心に座具、食具、彫刻などの作品を通して 身体感覚を可視化するための創作活動をおこなっている。 著書『椅子と日本人のからだ』ちくま文庫 『からだのメソッド~立居振舞いの技術』ちくま文庫 『日本人の坐り方』集英社新書 『美貌の文化史~神と偶像』中公文庫など多数。 近刊『座の文明論』品文社より。
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稲葉 俊郎 いなば・としろう |
1979年熊本生まれ。医師。2004年東京大学医学部医学科卒業。2014年東京大学医学系研究科内科学大学院博士課程卒業(医学博士)。現在、東京大学医学部付属病院 循環器内科 助教。 東大病院では心臓を内科的に治療するカテーテル治療や先天性心疾患を専門とし、往診による在宅医療も週に一度行いながら、夏には山岳医療にも従事している(東大医学部山岳部監督)。医療の多様性と調和への土壌づくりのため、西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。国宝『医心方』(平安時代に編集された日本最古の医学書)の勉強会も主宰。未来の医療と社会の創発のため、伝統芸能、芸術、民俗学、農業・・など、あらゆる分野との接点を探る対話を積極的に行っている。
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かさいじゅんこ |
クラニオセイクラル・バイオダイナミクス・セラピー・セラピスト 2000年より日本カウンセラー学院にて心理を学び始めプロセス志向心理学に出会う。プロセスワーク初級セラピスト。 また、幼児自閉症の子供への行動療法(ABA)に関わりNPO法人教育臨床研究機構のスタッフとして2007年まで参加。 2004年よりクラニオセイクラル(頭蓋仙骨療法)セラピーをインターナショナル・クラニオセイクラル・バランシング(ICSB)のバードレーナに師事、2012年 国際資格であるBCST(Biodynamic Craniosacral Therapist)を取得。
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かさいこうすけ(寿原煌介) |
心体技法研究家、セラピスト。セイクレッドサイレンス・ジャパン代表 80年代半ばより、様々な伝統的な養生法の研究や武道の伝承・修煉を続けている。また、ワークショップやセミナーなどで身心調律法や養生氣功を紹介している。 詳細はプロフィールをどうぞ http://relaxis.jp/profile
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