昨年2018年度スタディでは、通年でユング『アイオーン』を読み進めてきました。『アイオーン』では、ヨーロッパにおけるキリストの表象が、様々な表象と習合しつつ、いかようにして「自己」のシンボルとして機能したかを象徴史研究の成果を用いて詳しく考察していました。
これは基本的に歴史的素材の研究でしたが、はたして現代においては、自己シンボルはどのように現れているのでしょうか。これを扱ったのが、今回取り上げたユング生前最後の著作『空飛ぶ円盤』、原題「現代の神話」(1958)になります。
ユングによればUFO とは、いわば一種の集団心理現象で、東西冷戦下の緊張のもとで天空に投影された「自己」の統合シンボルです。当時、UFO が実在するかどうかばかりが議論されていたところで、早い段階からUFO 現象の心理的側面を指摘したユングの慧眼には、驚くべきものがあります。
テキスト: C.G.ユング『空飛ぶ円盤』、松代洋一訳、ちくま学芸文庫、1993.5(原著1958年)
ユング全集第10巻「過渡期における文明」所収
原題 Ein moderner Mythus : von Dingen die am Himmel gesehen werden
英訳題名 Flying Saucers : A Modern Myth of Things Seen in the Skies
初回スタディでは、まず最初にオリエンテーションとして、邦訳版には収録されていないユングの英語版への前書きを、拙訳にて読み進めました。ユング自身の経験から、UFOについての報道の偏りが噂話を作り上げ維持する様子が指摘されています。現代におけるマスメディアが、人々の欲望を形にして元型的イメージを成立させるにあたって役割を果たすことへの問題意識が伺えます。続いて、現代に至るまでのUFOに関わる事象の年表を参照しながら、いわゆる「UFO神話」が成立した背景を確認しました。(英語版前書きの拙訳と、UFO年表については、このページ内に掲載しています)
これに続いて「はじめに」「噂としてのUFO」を読み進めました。そこでユングは、UFOについての様々な噂話や報道の内容を検証した上で、UFO現象の心理学的側面に注目し、それはいわば一種の集団的な幻視現象であり、東西冷戦下の緊張のもとで天空に投影された「自己」の統合シンボルの現れだとみなします。中世であれば、救いを求める心理に呼応して「神」の幻視が見られましたが、合理的な現代人はすでにこうした神を信じられなくなっています。しかし、地球の外から高度な工学的知識をもって飛来する円盤に乗った知性体が、地球に対して「救い」となる知恵を授けることなら、自然科学的知見と矛盾することなく信じることができる。つまりUFO現象は、現代における「機械仕掛けの神」であることになります。
第2回 3月7日(木) 夢に現れたUFO
この章では、UFOのイメージが現れたいくつかの夢を取り上げ分析することで、UFOに投影されている心理的内容とその現代的背景について考察しています。ここはいかにもユングらしい方法論になっていると思います。
ユングは夢の分析を通して、一見して現代的な事象であるUFOイメージの中に、古代から生き続けている元型的イメージの表出を見出します。ユングによればUFOとは、心の全体性すなわち「自己」のシンボルであり、これが天上のしるしとして現われることで、すべての人に全体性を忘れるなと警告するものです。
現代においては、人格の統一を脅かすような憑依現象が、社会や国家といった集団を大規模に襲っている。その時代において「私には何ができるか」と問うならば、「あなたが常にそうであったものにおなりなさい」としか答えられない、とユングは言います。このような危険から人を救うものは、個人を抑圧したり破壊したりせずに全体性に導くような、宗教的・ヌミノースな感動しかない。そしてそれは、意識と無意識の統合による個性化過程においてしか現れない。現代の危機的状況にに対抗できるのは、唯一、それぞれの個人の個性化過程のみである、というのがユングの問題意識になります。
第3回 4月4日(木) 絵画におけるUFO・UFO 現象の歴史
「絵画におけるUFO」では、現代絵画に現れたUFOに関わるイメージを読み解くことで、引き続きUFOに投影されている心理的内容とその時代背景について考察が加えられます。また「UFO現象の歴史」では、UFO現象に類似した様子を描いた歴史上の絵画を取り上げることで、この問題が古来から連続して起きているものであることを示されます。
「絵画におけるUFO」にてユングは、現代芸術の特徴を、形式の破壊と意味の欠如にあるとします。それは対象を見なれないものにし、見る者の参加と理解を断ち切って、鑑賞者は困惑し突き戻される。するとそれは見る人の「主観的要素」にはね返ってきて、無意識の性向を活性化させることになる。そうした現代絵画の中に、UFO現象とも共通する現代的課題が現れているとユングは指摘します。
また「UFO現象の歴史」の中でユングは、歴史的資料の中に現代のUFO現象に類似した事象が現れて来ていたことを指摘します。UFO現象は現代に特有の装いを持ちながらも、本質的には歴史の中で繰り返し起きていた元型的事象であることになります。
第4回 5月9日(木) まとめ・心理学以外の観点から見たUFO・エピローグ
今期企画最終回では、「まとめ」「心理学以外の観点から見たUFO」「エピローグ」を読み進めました。これまでの内容のまとめに加え、ユング晩年の関心事であった、いわゆる共時性に関わる話題にも触れられています。
また、UFOコンタクティの著作(オルフェオ・M・アンジェルッチ『円盤の秘密』)*と、科学者によるSF小説(フレッド・ホイル『黒い雲』)*が読み比べられ、そこに現代におけるUFO現象と共通のテーマがいかに現れているかが考察されます。
* Orfeo Angelucci "The Secret of The Saucers" 1955
邦訳:オルフェオ・アンゼルチ『宇宙人は呼ぶ』宇宙友好協会、1960年
Fred Hoyle "The Black Cloud" 1957
邦訳:フレッド・ホイル『暗黒星雲』鈴木敬信訳、法政大学出版局、1958年
東西冷戦下の核戦争への不安の中、分裂した精神状況に対して、人間の魂の底にある調停への欲求が、全体性のシンボルとしてUFO現象の中に現れてきている。それはかつてのような「神」の姿ではなく、信仰を失った現代人にも受け入れられるような、高度に発達した「宇宙の存在」である。こうしたUFO現象を、UFO信奉者のようにそのまま素朴に受け入れることも、合理主義者のようにこれを戯れとして取り扱うことも、ともにユングは問題があるとします。それを「象徴として受け取る」態度があってこそ、はじめて自己の発するメッセージを正確に受け取り、統合の個性化過程がなされうるとユングは強調します。またユングは、晩年に関心を持っていた「数」の元型や共時性の問題についても語り、心と物質とを統一的に理解できるような世界観の枠組みを示唆していきます。
最後に、邦訳テキストには掲載されていない、英語版の「エピローグ」補足部分について、英語原文を読み進めていきました。ここはイギリスのSF作家、ジョン・ウィンダム John Wyndham のSF小説「ミッドウィッチのカッコウたち The Midwich Cuckoos」(1957) の解釈になります。ユングはSF作品をかなり読んでいるようですが、こうした作品こそが時代の無意識をよく表象しているように考えていたのでしょう。
作品では、イギリスのある寒村が24時間のあいだ催眠状態に陥れられ、目覚めた後には村にいる受胎能力のある女性が全て妊娠しているとわかります。生まれた子どもたちは、互いにつながった精神を持つ進化した知性を持ちますが、これを脅威に感じた先生の自爆によって道連れにされて物語は終わります。ユングはこの作品を、天使による受胎告知と比較し、自爆をこうした神聖なるものの拒否として見ています。また、子どもたちのつながった意識状態を、個人としての分化が排除された無意識的同一性を表すものとし、画一的な社会の到来の予感と結びつけます。ユングはこの作品を、様々な解釈の余地を残す作品として捉えています。
なお、このウィンダムのSF小説は、ハヤカワ文庫より『呪われた村』のタイトルで邦訳が出ています。また、1960年にアメリカで「Village of the Damned」(邦題『未知空間の恐怖/光る眼』)のタイトルにて映画化されており、1995年にはリメイクもされています。
また、ユングによるこの「エピローグ」補足部分ですが、先に述べた通り、今回の邦訳テキストには収録されていません。ただ、雑誌『地球ロマン』復刊2号・総特集=天空人嗜好(1976.10)に、四方田犬彦によるユング「空飛ぶ円盤」抄訳が掲載されており、その中でこの「エピローグ」補足部分の邦訳を読むことができます。
●ユング『空飛ぶ円盤』英語版第一版への前書き 邦訳
(英語版のみ・ドイツ語版には収録されず) 試訳:白田信重
世界中を駆けめぐっている空飛ぶ円盤についての噂話は、様々な理由から、心理学者にとって挑戦的な問題を提示しています。主となる問題は──これこそが最も重要な点になるのですが──それらは本当に存在するのか、それとも単なる空想の産物か、ということです。この問いは、いまだ解決してはいません。それらが実在するとしたら、いったいそれは何なのでしょうか?それらが空想の産物であるならば、そのような噂話がなぜ起きるのでしょうか?
この後者のほうの問題については、私自身が、興味深くまったくもって予想外であった発見をすることになりました。1954年、私はスイスの週刊誌「Die Weltwoche」にひとつの論説を書きました。私はそこで、UFO(未確認飛行物体)の実在を信じる航空専門家たちが語っていた真摯な見解について、相応に尊重しつつ話をしたものの、最終的には懐疑的な立場を表明していました。しかし1958年に、この取材記事が世界中の報道によって急に発見され、「ニュース」として野火のように地球の西の端から東の端まで伝え広がりましたが、悲しいかな、それはねじ曲げられた形においてでした。私は円盤の信奉者として引き合いに出されることになりました。私はユナイテッド・プレスに声明を出し、私の見解が真に意味するところを説明しましたが、この時になると一転、まるで通信が途切れているかのごとくになりました。私の知る限り、ドイツの新聞一紙を除いて、誰も私の声明に注目することはなかったのです。
この出来事が示すことには、かなり興味深いものがあります。ここで見られた報道機関のふるまい方から、国際世論について行われたギャラップ調査であるかのように、以下のような結論を導き出すことができるでしょう。UFOの実在を確信させるようなニュースは歓迎されるが、懐疑論は歓迎されていないように見える。UFOの実在を信じることは、大方のものの見方に合致しているが、これに対して懐疑的見解はそれに水を差して失望させるものだ。このことから次のような見方が引き出せます。こんにち世界中において、円盤の実在を信じ、それが本当に存在することを欲するような傾向があって、それは無意識のうちに報道によって助長されている。そうでなければ、UFO現象に対してここまで共感的な姿勢が保たれるようなことはない。
この特筆すべき事実それ自体こそ、心理学者の関心に値するものです。円盤が存在しないことより存在することのほうが、なぜより望まれることになっているのか。本書はこの疑問に回答を与える試みです。本書では、さらなる関心を持った読者が参照すべき文献の提示を除き、煩雑となる脚注は割愛しました。
C.G.ユング 1958年9月
● UFO神話の歴史と時代背景 作成:白田信重
UFO神話の歴史(木原善彦『UFOとポストモダン』平凡社新書、2006)
第1期 空飛ぶ円盤神話(1947-73) 円盤の目撃、米軍の隠蔽工作、コンタクティー
第2期 エイリアン神話(1973-95) アブダクション、キャトル・ミューティレーション、グレイ
第3期 ポストUFO神話(1955) エイリアンイメージの拡散
1898 ウェルズ『宇宙戦争』
1917 ロシア革命
1922 ソビエト連邦成立
1938 ラジオドラマ『宇宙戦争』放送による火星人侵略騒動
1939 第二次世界大戦勃発
1945 第二次世界大戦終結
1947 6月24日ケネス・アーノルド事件(UFO神話の始まり)(ロズウェルUFO回収?)
1948 この頃から「赤狩り」始まる
1949 「サタディ・イブニングポスト」特集記事 ← UFO(未確認飛行物体)という用語の最初の使用
中華人民共和国成立
1950 ドナルド・キーホー「空飛ぶ円盤は実在する」
1951 映画『地球の静止する日』、ユング『アイオーン』、
1952 米軍がUFO(未確認飛行物体)という用語を正式採用、アダムスキーのコンタクト事件
1954 ユングがスイスの週刊誌「Die Weltwoche」にUFOについての論説を寄せる
1955 「日本空飛ぶ円盤研究会」設立
1957 ソ連スプートニク1号打ち上げ
1958 ユング『現代の神話(空飛ぶ円盤)』
1960 SETI計画(地球外知的生命探査計画)始まる
1961 ユング死去、ソ連が世界初の有人宇宙飛行、ヒル夫妻誘拐事件(グレイの登場)
1962 キューバ危機、三島由紀夫が夫人とともにUFO目撃、三島由紀夫『美しい星』
1965 米ベトナム戦争介入、ニューヨーク大停電
1966 アメリカ空軍のUFO研究プロジェクト始まる(→ 1969「コンドン報告」)
フラー『宇宙誘拐』(ヒル夫妻誘拐事件の報告)
1969 米アポロ11号月面着陸、「コンドン報告」及び「プロジェクト・ブルーブック」がUFOの存在を否定
デニケン『未来の記憶』
1970 「バミューダ三角海域」神話の登場
1972 米ソ・デタントの始まり
1973 円盤目撃情報の減少、キャトル・ミューティレーションの報告、エイリアン誘拐事件の報告、UFO墜落事件の再発掘
1975 ベトナム戦争終結
1977 映画「未知との遭遇」
1978 イラン・イスラム革命
1979 ソ連アフガニスタン侵攻
1980 バーリッツ&ムーア『ロズウェルUFO回収事件』
1991 ソビエト連邦解体
1995 「異星人解剖フィルム」公開
【開催通知】
◆ユングスタディ 2019(前期) ※事前の申し込みが必要です
「ユング『空飛ぶ円盤』を読む」(全4回)
昨年度スタディでは、通年でユング『アイオーン』を読み進めてきました。『アイオーン』では、ヨーロッパにおけるキリストの表象が、様々な表象と習合しつつ、いかようにして「自己」のシンボルとして機能したかを象徴史研究の成果を用いて詳しく考察していました。
これは基本的に歴史的素材の研究でしたが、はたして現代においては、自己シンボルはどのように現れているのでしょうか。これを扱ったのが、今回取り上げるユング生前最後の著作『空飛ぶ円盤』、原題「現代の神話」(1958)になります。
ユングによればUFO とは、いわば一種の集団心理現象で、東西冷戦下の緊張のもとで天空に投影された「自己」の統合シンボルです。当時、UFO が実在するかどうかばかりが議論されていたところで、早い段階からUFO 現象の心理的側面を指摘したユングの慧眼には、驚くべきものがあります。
テキスト:C.G.ユング『空飛ぶ円盤』、松代洋一訳、ちくま学芸文庫、1993.5
テキストを持っていない、読んでいない方でも、資料を配布しますので参加可能です。また、開催日は原則として第1木曜日ですが、5月については連休があるため、第2木曜日を予定しています。日程や会場が変更する場合がありますので、ご注意ください。
進行役:白田信重、山口正男、岩田明子(ユング心理学研究会)
■日程・会場
第1回 2 月7 日(木) オリエンテーション、はじめに・噂としてのUFO
会場:中野区産業振興センター
第2回 3 月7 日(木) 夢に現れたUFO
会場:中野区産業振興センター
第3回 4 月4 日(木) 絵画におけるUFO・UFO 現象の歴史
会場:中野区産業振興センター
第4回 5 月9 日(木) まとめ・心理学以外の観点から見たUFO・エピローグ ※会場が異なります
■時間:19:00~21:00 (開場は18:45)
■会費:1500円
■問い合わせ先: [email protected](研究会事務局)
※資料準備の都合等から、事前の参加申し込みが必要です。
※セミナー時に撮影した写真を当研究会のホームページやFacebook等のソーシャルメディアに公開する場合があります。あらかじめご了承ください。
第1回 オリエンテーション、はじめに・噂としてのUFO
今期前半のユングスタディでは、ユングの生前最後の著作『空飛ぶ円盤』
(1958)を読み進めていきます。UFO神話の心理的背景について考察した著作です。
第2回 夢に現れたUFO
第一回となる2月7日のスタディでは、まず最初にオリエンテーションとして、邦訳版には収録されていないユングの英語版への前書きを、拙訳にて読み進めました。ユング自身の経験から、UFOについての報道の偏りが噂話を作り上げ維持する様子が指摘されています。現代におけるマスメディアが、人々の欲望を形に
して元型的イメージを成立させるにあたって役割を果たすことへの問題意識が伺えます。続いてUFOに関わる事象の年表を参照しながら、UFO神話成立の背景を確認しました。
これに続いて「はじめに」「噂としてのUFO」を読み進めました。そこでユングは、UFOについての様々な噂話や報道の内容を検証した上で、UFO現象の心理学的側面に注目し、それはいわば一種の集団的な幻視現象であり、東西冷戦下の緊張のもとで天空に投影された「自己」の統合シンボルの現れだとみなします。中世であれば、救いを求める心理に呼応して「神」の幻視が見られましたが、合理的な現代人はすでにこうした神を信じられなくなっています。しかし、地球の外から高度な工学的知識をもって飛来する円盤に乗った知性体が、地球に対して「救い」となる知恵を授けることなら、自然科学的知見と矛盾することなく信じることができる。つまりUFO現象は、現代における「機械仕掛けの神」であることになります。
次回3月7日のスタディでは「夢に現れたUFO」を読んでいきます。UFOに投影されている人々の心理的内容を考察するには、人々の夢の中に現れるUFOがいかに扱われているかを見るといい。ここはいかにもユングらしい方法論になると思います。
第3回 絵画におけるUFO・UFO 現象の歴史
ユングの生前最後の著作『空飛ぶ円盤』(1958)を読んで行く今季企画の、その第2回となる3月7日のスタディでは、「夢に現れたUFO」を読み進めました。この章では、UFOのイメージが現れたいくつかの夢を取り上げ分析することで、UFOに投影されている心理的内容とその現代的背景について考察しています。
ユングは夢の分析を通して、一見して現代的な事象であるUFOイメージの中に、古代から生き続けている元型的イメージの表出を見出します。ユングによればUFOとは、心の全体性すなわち「自己」のシンボルであり、これが天上のしるしとして現われることで、すべての人に全体性を忘れるなと警告するものです。現代においては、人格の統一を脅かすような憑依現象が、社会や国家といった集団を大規模に襲っている。その時代において「私には何ができるか」と問うならば、「あなたが常にそうであったものにおなりなさい」としか答えられない、とユングは言います。このような危険から人を救うものは、個人を抑圧したり破壊したりせずに全体性に導くような、宗教的・ヌミノースな感動しかない。そしてそれは、意識と無意識の統合による個性化過程においてしか現れない。現代の危機的状況にに対抗できるのは、唯一、それぞれの個人の個性化過程のみである、というのがユングの問題意識になります。
次回4月4日のスタディでは「絵画におけるUFO」「UFO現象の歴史」を読んでいきます。「絵画におけるUFO」では、現代絵画に現れたUFOに関わるイメージを読み解くことで、引き続きUFOに投影されている心理的内容とその時代背景について考察が加えられます。また「UFO現象の歴史」では、UFO現象に類似した様子を描いた歴史上の絵画を取り上げることで、この問題が古来から連続して起きているものであることを示していきます。
第4回 まとめ・心理学以外の観点から見たUFO・エピローグ
今期企画第3回となる4月4日のスタディでは、「絵画におけるUFO」「UFO現象の歴史」を読み進めました。
「絵画におけるUFO」にてユングは、現代芸術の特徴を、形式の破壊と意味の欠如にあるとします。それは対象を見なれないものにし、見る者の参加と理解を断ち切って、鑑賞者は困惑し突き戻される。するとそれは見る人の「主観的要素」にはね返ってきて、無意識の性向を活性化させることになる。そうした現代絵画の中に、UFO現象とも共通する現代的課題が現れているとユングは指摘します。
また「UFO現象の歴史」の中でユングは、歴史的資料の中に現代のUFO現象に類似した事象が現れて来ていたことを指摘します。UFO現象は現代に特有の装いを持ちながらも、本質的には歴史の中で繰り返し起きていた元型的事象であることになります。
最終回となる次回5月9日のスタディでは、「まとめ」「心理学以外の観点から見たUFO」「エピローグ」を読み進めます。今までのまとめに加え、ユング晩年の関心事であった、いわゆる共時性に関わる話題にも触れられます。また、UFOコンタクティの著作と、科学者によるSF小説が読み比べられ、そこに現代におけるUFO現象と共通のテーマがいかに現れているかが考察されます。
5月は冒頭に連休があるため、開催は第二木曜日となります。また、次回より会場が変更になります。18時45分の開場時間前には施設内に入ることができませんので、ご注意ください。