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◆ユングサロン特別企画


2025/4/17 妖怪人類学 〜「実在」への問いを旅する〜 

講師:甲田烈

 

 令和7年4月のユングサロンでは、哲学者の甲田烈さんをお招きしまして、「妖怪人類学」のタイトルでお話を伺います。

 はたして「妖怪が”いる”」とは、どういうことなのか。この「実在」への問いを通して、新しいあり方が開けてくる旅に出ます。

 

 ◉ 講師よりメッセージ

 みなさんは、「妖怪」というと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。

 

 電車の中で、本講座の内容についてぼんやりと考えているときに、同じ車両に乗ってきた親子連れが、なにやら楽しげに話をしていました。それとなく耳を傾けると、「一つ目小僧」や「ろくろ首」について子どもがお母さんに熱心に説明しているらしい。手にしている小さなゲーム機のようなものの画面には、どうやら説明しているものの画像が写り込んでいるようでした。思わずろくろのように首を伸ばしてチラ見してしまったのは、言うまでもありません。

 今日では、祖父母から狐や狸に化かされた話など、おそらく直に聞くこともない子どもたち。それでも、私たちが「妖怪」としてイメージするであろうようなモノたちを好んでいることには変わりません。妖怪ウォッチのブームは今は昔のこととしても、鬼をモティーフにした『鬼滅の刃』や、両面宿儺の伝承から始まる『呪術廻戦』、さらにはネット媒体を中心とした都市伝説やTikTokの都市伝説の画像など、そしてさらには、書籍として相次ぐ地方別の事典の刊行など、妖怪への世間の注目は、どうやら途切れることはなさそうです。

 

 ところで、さきほど「「妖怪」としてイメージするであろうようなモノ」と書きました。実は「妖怪」というこの言葉。一筋縄ではいかないのです。

 『ゲゲゲの鬼太郎』や『河童の三平』『悪魔くん』などで知られる水木しげる(1922-2015)は、なんと齢70を超えるころから漫画家に加えて「冒険家」を名乗るようになり、それまで絵画化してきた日本の妖怪たちの体験と知識を軸に、アイルランド、マレー半島、メゾアメリカ、韓国、メキシコなど、世界各地をフィールドワークし、遺著となった『水木しげるの妖怪人類学』(2016)に結実させます。そこでは、世界各地の「妖精」や「精霊」も「妖怪」という言葉にくくられています。その背景には、現地の音や気配に触れながら、感覚を研ぎ澄ましていった軌跡が見られます。水木はその生涯を通して、「妖怪は”いる”」と言い続けていました。

 

 さて、時あたかも同じく、水木のこうした動向とは没交渉のまま、文化人類学の世界でひとつの地殻変動が起こりつつあります。そのキーワードは「存在論的転回」。21世紀初頭から海外で知られ、2010年台後半以降に日本でも紹介され始めたこの動向では、これまで何かの象徴や喩え話として人類学者によって解釈されてきた「精霊」について、現地の人々の行いや言葉を真剣に受け取るという観点から、それらの「実在」について語られるようになってきており、その影響は日本の妖怪研究にも見られるようになってきています。調査者である人類学者が、学問的な訓練を受け、発表の場も本国に持っていたことから、現地の人々に対して優位に立つこと対して、かつては無自覚な姿勢を持っていたことから、そうした態度への反省の時期を経て、むしろ現地の人々から学ぶということにシフトしつつあります。さらに、モノやコトがある(実在する)ことの意味を問うというこの姿勢は、当たり前な前提を問いなおすという形で、哲学の営みとも交錯しています。

 

 では、あらためて、「妖怪」とは何なのでしょうか。

 そして、それが「実在」するとは、どういうことなのでしょうか。

 

 かつて、C.G. ユングも、「おばけについて話すことは健康にいい」というような言葉を残しています。どんなに時が経っても、忘れられることがなく、それどころか今やワールドワイドな問いかけを必要とする妖怪たちに、親しんでみませんか。予備知識は一切必要ありません。「実在」への旅をご一緒できれば幸いです。

 

 

◉ 講師 甲田烈 (ユング心理学研究会顧問)

 現在、東洋大学井上円了研究センター客員研究員・武蔵野学院大学ヌーソロジー研究所特任研究員。東洋大学文学研究科大学院博士前期・後期課程において仏教学を専攻。大学院時代は、近・現代インド思想に関心を持つかたわら、トランスパーソナル心理学・インテグラル理論を研究。幼少時より妖怪好きであることから、近代ヨーガに代表される意識変容理論やウィルバーなどの心理学思想の枠組みだけには飽き足らず、母校の創立者である明治の妖怪博士・井上円了の「妖怪学」を現代の問題意識を踏まえて継承・発展させるという関心のもと、民俗学・文化人類学・哲学といった隣接領域との対話を試みる。著書は『手にとるように哲学がわかる本』(かんき出版)、『水木しげると妖怪の哲学』(イーストプレス)、共著に『入門 インテグラル理論』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

 

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 ■ 開催日時:4月17日(木)19:30 〜 21:30    

 ■ 参加費:1,500円

 ・参加申込者には会の終了後、録画アーカイブを期間限定で配信する予定です。

  (諸事情により配信できない場合もありますので、あらかじめご了承ください)

 ・当会では、お申し込みいただいた後での参加者都合による返金は致しません。

 ■ 参加方法

  オンライン参加と、配信会場での現地参加の、二種類の参加ができます。

  どちらの参加方法でも、終了後にアーカイブ配信を視聴できます。

  

 (1)オンライン開催(zoomミーティングルーム形式)

  開始時間にオンラインのミーティングルームに参加します。定員45人。

  配信会場とは、チャットでのやり取りや、対面での議論が可能です。

  ・開場は開始15分前の19:15です。

  

 (2)配信会場での現地参加

  配信会場にお集まりいただいて現地参加できます。定員10人。

  配信会場:〈シェアリングスペース〉chez Alterna(シェ・オルタナ)

    東京都中野区松が丘1丁目 17-12

    西武鉄道新宿線・新井薬師前駅より徒歩3分

    https://chez-alterna.com

  ・当日は紙資料を配布しますので、資料代500円を別途いただきます。

   (資料代は現金でご用意ください)

  ・開場は、開始30分前の19:00です。

   (開始前までは参加者間の交流の時間となります)

  

※ 申し込み後に参加方法を変更したい場合には、事務局までご一報ください。

 ■ 参加申し込みページ https://jungsalon20250417.peatix.com

 ■ 主催:ユング心理学研究会 http://jung2012.jimdo.com/

 ■ 問い合わせ:研究会事務局 [email protected]

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